【実例解説】相続した実家が「未登記建物」だった時の対処法|必要書類から共有名義の表題登記まで土地家屋調査士が徹底ガイド

本記事で紹介する事例は、業務上の守秘義務および依頼主様のプライバシーを保護するため、内容の一部(ご依頼の経緯、所在地、建物形状、家族構成の詳細など)を変更して掲載しております。
「父が亡くなり、実家を兄弟で相続することになった。しかし、いざ名義変更をしようと登記簿を調べたら、建物の登記がどこにも存在しなかった……。」
このようなご相談をいただく機会が増えています。いわゆる「未登記建物」の問題です。昔は銀行融資を受けずに現金で住宅を建てた場合、登記をせずにそのまま住み続けてしまうケースがありました。
しかし、登記がないままでは相続による名義変更(所有権移転登記)もできず、売却も解体も、将来の融資利用もできません。本記事では、私が実際に担当した「相続した未登記建物の表題登記」の実例をベースに、手続きの裏側を詳しく解説します。
【1】今回の相談内容:実家が「未登記」と判明した経緯
- 家族構成:ご兄弟2人(長男・次男)
- 対象物件:木造2階建て住宅(新城市・築25年)
- 判明した経緯:相続登記を司法書士に依頼した際、土地の登記はあるが「建物の登記がない」ことが発覚。
- ご要望:兄弟で2分の1ずつ共有名義として登記し、将来のリスクを解消したい。
当初、ご兄弟は大変困惑されていました。「固定資産税は毎年払っていたのに、なぜ登記がないのか?」という疑問です。実は、「市役所の課税台帳」と「法務局の登記簿」は別物です。市役所が建物を把握して税金を徴収していても、法務局に登記がされているとは限らないのです。
【2】所有権を証明するための「証拠書類」の収集
表題登記(初めての登記)において最も重要なのは、「その建物が間違いなく依頼主のものである」という客観的な証明です。今回は以下の書類が揃っていたことが、スムーズな解決の鍵となりました。
① 建築時の「建築確認済証」と「検査済証」
これらは「どんな建物が、いつ、誰によって建てられたか」を公的に証明する最強の書類です。築25年以上経過していても、これらが大切に保管されていたことは幸運でした。図面が添付されているため、建物の同一性を確認する重要な資料となります。
② 遺産分割協議書
亡くなったお父様の名義から、今回のご兄弟2人(各2分の1)へ所有権が引き継がれたことを証明する書類です。内容に不備がないかチェックを行いました。
③ 固定資産税の納税証明書(名義人変更済み)
お父様の死後、未登記建物の「納税通知書」の名義をご兄弟に変更していたため、これも「現所有者」を裏付ける補足資料として活用しました。
もし「確認済証」がない場合でも諦めないでください。公共料金の領収書や、建築会社との工事請負契約書、あるいは近隣住民による「この建物は間違いなく〇〇さんのものです」という証明書(上申書)などを積み重ねることで、登記が可能な場合があります。
【3】現地調査:図面と現実の「答え合わせ」
書類が揃ったら、私たち土地家屋調査士の出番です。実際に現地へ伺い、建物の形状、床面積、構造を精密に計測します。
図面通りか?増改築はないか?
今回、25年前の建築確認図面がありましたが、現地を計測したところ、2階部分にわずかな増築未登記部分があることが判明しました。
「図面があるから測らなくていい」とはいきません。「今の姿」を正確に反映させるのが登記の役割だからです。増築部分も含めた最新の「各階平面図」と「建物図面」を作成しました。
共有名義(持分2分の1)の確認
対象物件を共有持ち分とする場合、申請書にはそれぞれの持分を明記します。これにより、将来的に一方が勝手に売却したり、トラブルになったりするリスクを抑えることができます。
【4】登記書類の作成から納品までの流れ
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建物表題登記の申請準備
計測したデータと資料を元に、CADで正確な図面を作成します。本件建物を調査した結果を説明する書面をまとめます。 -
法務局への申請
オンラインにて管轄の法務局へ申請を行います。未登記建物の場合は、法務局の登記官が現地調査に来ることもあります(今回は書類が完璧だったためスムーズに受理されました)。 -
登記完了・納品
約1〜2週間で登記が完了します。法務局から発行された「登記完了証」と、登記事項証明書等をご兄弟に納品しました。
【5】表題登記の次は「保存登記」へ
私たちの仕事(表題登記)が終わると、建物の「表題部」という、建物の物理的な状態を示す部分が完成します。しかし、これだけでは「誰の持ち物か」という権利を第三者に主張することができないため、引き続き司法書士による「所有権保存登記」が必要になります。
【6】未登記建物を放置する「3つのリスク」
今回の事例のように対応できれば良いですが、放置すると以下のようなトラブルに直結します。
- ✔売却ができない:買い手が住宅ローンを組めないため、事実上売却不可能です。
- ✔相続が複雑化する:孫の代まで放置すると、権利関係者が数十人に膨れ上がり、書類を揃えることすら不可能になります。
- ✔罰則の対象:不動産登記法では、建物新築から1ヶ月以内に登記することが義務付けられており、過料(罰金のようなもの)の規定もあります。
【7】まとめ:プロの連携が「安心」を生む
相続した実家が未登記だった……という事態に直面すると、多くの方は「何から手をつけていいか分からない」とパニックになります。しかし、建築確認済証などの古い書類が残っていれば、解決への道筋は必ずあります。
土地家屋調査士は「建物の形と所有者」を確定させ、司法書士が「権利」を守る。このプロ同士の連携こそが、大切な資産を守る最善策です。
その実家、登記はされていますか?
「未登記かもしれない」「書類があるか分からない」という不安をお持ちの方へ。
元公務員・土地家屋調査士の淵名が、法務局の調査から現地計測、登記完了までワンストップでサポートします。
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