未登記の建物が生まれる理由
前回は、土地家屋調査士として未登記の建物を登記する重要性についてお話ししました。
前回の記事はこちら
■イントロダクション
建物を登記していない「未登記建物」は、一見問題がなさそうに思えても、
・所有権の証明ができない
・売却や相続時にトラブルが起こりやすい
など将来のリスクを抱えています。
この記事では、未登記建物が生まれる5つの主な理由を具体例とともに解説し、最後にすぐ使える「早期登記チェックリスト」もご用意しました。
1.未登記建物が生まれる5つの理由
1.住宅ローンを利用しなかった
登記は金融機関が担保として求める義務の一つですが、
全額自己資金で建築した場合、「やらなくていい」と省略されることがあります。
・登録免許税や司法書士報酬を節約したい
・「そのうち誰かがやってくれる」と先延ばし
・手続きの流れがわからず放置
2.登記手続きを知らなかった
建築会社やハウスメーカーから案内が不十分で、
施主が「自動的に登記される」と誤解してしまうケース。
・必要性を理解できる説明が不足
・契約書に登記義務の条項がない
・専門家からのフォローがなく工期終了
3.増築・改築部分だけ手続きを怠った
既存建物の増築・改築は、追加した床面積や構造変更も登記が必要ですが、
「小さい工事だから申請不要」と誤認されがちです。
・子供部屋増築部分の未登記
・間取り変更後の更新漏れ
・エクステリアや離れの登記申請見落とし
4.戦前・戦後すぐの古い建物
当時は登記制度が整っておらず、
戦災で法務局の書類が焼失した地域では正式な登録が行われないまま残存。
・築70年以上の平屋が登記簿に載っていない
・戦災地域の家屋で書類散逸
・所有者転居で更新手続きが滞った建物
5.相続で受け継いだ家屋が未登記
相続登記を先延ばしにすると、名義変更が完了しないまま未登記状態が続き、
相続人同士や金融機関とのトラブルが増加します。
・相続人間の分割協議がまとまらない
・費用節約で手続きを後回し
・そもそも何をすべきかわからない
2.未登記建物が抱える主なリスク
• 売却時に買主のローン審査が通らない
• 相続登記で相続人同士の紛争発生
• 補助金や融資申請で書類不備により審査落ち
• 災害時に所有権を証明できず保険請求に支障
3.早期登記に役立つチェックリスト
1. 建築完了後、1ヶ月以内に登記申請を行う
2. 増改築後は必ず床面積・構造変更の登記を行う
3. 相続登記は速やかに完了させる
4. 自己資金建築の場合も必ず登記する
5. 不明点があれば早めに土地家屋調査士へ相談
4.まとめ
未登記建物は、住宅ローン未利用や手続き認識不足、増改築の漏れ、古い制度下の残存、相続先延ばしなど多様な要因で発生します。
所有権の明確化と将来トラブル防止のため、早めの登記完了を強くおすすめします。
未登記建物でお悩みの方は、経験豊富な土地家屋調査士までお気軽にご相談ください。